Languages

Contact an EHS Services expert

7 + 2 =
Solve this simple math problem and enter the result. E.g. for 1+3, enter 4.

動向情報

中国:EHS法令違反で断ち切られるサプライチェーン

2018年1月26日

サプライヤーの環境規制遵法監督の重要性

2017年9月、中国の金属加工工場Jielong Metal Wiredrawing Co., Ltd.に対して工場閉鎖命令が下されました。通常ならば、ニュースに取り上げられることも少ないであろう出来事です。しかし、この工場の取引先である大手独系自動車部品メーカーが自社の主要サプライヤーに科された環境規制違反に対し、上海市当局に罰則適用の遅延を求める緊急嘆願書を公開したことで大きな注目を集めることとなりました。

 

この独自動車部品メーカーのCEOは嘆願書内で、Jielong社は中空軸ローラーの唯一のサプライヤーであり、突然の閉鎖はサプライチェーンを分断し、代替サプライヤーを探すのに最低でも3か月はかかると説明しています。その上で、今回のようなサプライチェーンの分断は中国の主要自動車製造業者に悪影響を与え、300億中国元(約45億米ドル)の経済損失にも繋がりうる「著しく緊急な事態」であると警鐘を鳴らしました。

 

Jielong社は環境影響評価レポートを作成していないのは法令違反であるとして、2017年9月初旬、地方当局から生産活動の停止と生産設備の解体を命じられました。ところが、実際のところ、当該企業はこれに先立って中国環境保護当局による全国的な取締り活動により「違法に設立され、操業されている」企業と特定され、閉鎖するよう要求されていたのです。また、郡当局の監視対象汚染者リストにも名を連ねており、地方当局もJielong社に対して過去2度に渡って生産停止命令を出していました。(2016年12月と2017年3月)加えて、大気汚染防止法違反で2度の行政処分を受けているうえ、排水についても基準値を超過した汚染水を排出してました。このような経緯から、9月には給水と電力供給を止め、強制的な閉鎖に踏み切ったというわけです。

 

海外自動車部品メーカーによる緊急嘆願書は、中国マスコミの間で大きな話題となり、世論も分かれました。海外のメーカーに同情し、経済成長と雇用をないがしろにする環境保護当局の「キャンペーン」方式の取締りを批判する声もありました。一方で、法の原則を守る厳格な執行を称賛し、そもそもこのような事態を招いたのは自動車部品メーカーがサプライチェーンの健全性に関心を払わないでいた結果であり、引いては企業の社会的責任を果たしてこなかったためだと指摘する声も上がりました。

 

本件に対する政府の対応は一貫していました。自動車部品メーカーの嘆願書を退け、Jielong社には9か月間という顧客に連絡するには充分な時間があったと説明しました。さらに、Jielong社の顧客は、サプライヤーの遵法状況により注意を払うべきであったと指摘しています。環境保護省も「鉄拳による汚染防止」と環境監視を強化する方向性は不可逆であると宣言し、地方当局の対応を強く支持しました。

 

従来中国では、環境保護当局が抑止力のある制裁手法を持たず、地方当局も経済成長を重視する傾向にあったため、環境法令の施行度は低いと見られてきました。しかしながら、近年の深刻な環境汚染を受けて状況は一変し、違法な汚染者に対する制裁措置が著しく強化されています。

 

例えば、違反者が命令に反して違反状態を是正しない場合、中国環境保護当局は日単位で継続的な罰金を科すことができます。2017年5月にはこの規制が強化され、当局による継続的罰金は上限なく、かつ容易に科せるようになりました。2017年1月から7月の間にも622件の継続罰金刑が発動され、罰金総額は7億6,100万元(約1億1,400万米ドル)に上ります。また、中国環境保護当局は規制基準を超過した汚染物質を排出する企業に対しては直ちに生産減または生産停止を命じることができるようにもなりました。前制度では、期限内に違反の是正ができない場合にのみそのような措置が取られていたことを考えると、劇的ともいえる変化です。

 

地方レベルでの取り締まりを強化するため、環境保護省は2017年4月から1年間、中国北東部における大気汚染の防止と管理を対象にして厳格な査察を遂行しています。この活動によって多くの違反企業が閉鎖命令を受け、マスコミは「過去最大級の査察」「環境保護の嵐」と称しています。このようなキャンペーン方式の「一度きりの」取締り手法には疑念の声もあるものの、中国政府の環境法令を重視する姿勢は明らかであり、これまでの汚染放置の経済成長パターンからは確実に転換していくと考えられます。

 

企業及び責任者(CEOや法務取締役等)は行政処分に加え、より厳格な刑事及び民事制裁に直面する可能性もあります。公益訴訟制度の導入によって市民団体や検察官が提訴する環境関連の訴訟は増加しており、これに伴う刑事罰の数は2016年7月から2017年6月までで27,000件にも上りました。環境破壊に対する制裁の最高額は2017年8月のテンガー砂漠での廃棄物違法投棄で、汚染者である8企業に言い渡され、当該企業は汚染土壌の浄化費用5億6,900万元(約8,600万米ドル)と公的基金への拠出金600万元(約90万米ドル)の支払いに合意しています。

 

このような環境法令執行の厳格化の中、中国国内に施設を持つ企業にあっては、今一度法令遵守に真剣に向き合い、サプライチェーンにおける健全性も自社のCSRの一環として監督していくことが求められています。

 

201712

Taotao Yue, Enhesa EHS Regulatory Consultant

日本語版 田崎裕美 日本エンヘサ株式会社

Languages