サステナビリティレポートを成功に導く6つのステップ

ESG格付の向上は優れたサステナビリティレポート作成で実現

by Gabriela Troncoso Alarcón

*本記事は、2021年9月発行英語レポートの抄訳

サステナビリティレポートがスポットライトを浴びているのは周知のことであり、企業はその重要性を十分感じているでしょう。投資家からの支援を拡大したり、ブランドへのさらなる信頼を顧客に浸透させたりできる可能性があることから、サステナビリティへの取組みを効果的に測定することは、企業に大きな利益をもたらします。ただし、それは投資家や顧客がその取組みを正しく理解した場合に限られます。自社でサステナビリティレポートをすでに作成しているにせよ、または将来的に作成を計画しているにせよ、次にあげる6つの成功へのステップに従ってサステナビリティレポートを作成し、会社に真の価値をもたらしてください。

1. 経営幹部を取り込む――企業全体のコミットメントこそが鍵

最初の、かつ最も重要なステップは、自社の経営層をサステナビリティレポートにコミットさせることです。これは経営幹部から許可を得るだけでなく、他の全ての社員を関与させるために経営幹部の後ろ盾を得ることをも意味します。企業全体をサステナビリティレポート作成にコミットさせるには、まず経営者がサステナビリティレポートにコミットするメリットを理解することが重要です。経営層は、対象となる環境・社会・ガバナンス(ESG)の問題を認識し、さらに自社がそれらの問題に対してどれほど適切に対処しているかを理解しなくてはなりません。経営層内の意識を高める最も効果的な方法の1つは、サステナビリティまたはCSRの問題に関するトレーニングを経営層向けに実施することです。

企業は、サステナビリティに関する特定の目標を優先させる約束をするとともに、その目標達成に必要なものを自社に備えることも必要です。たとえば、企業はある一定期間内のCO2排出量削減を目標として設定した場合、そのコミットメントの裏付けとして、自社の事業の再構築や再考に対する具体的な投資がある場合にのみ、実際に進歩を遂げることができます。

2. 専任のサステナビリティレポートチームを編成

レポート作成プロセス全体を管理する専任チームを結成し、当該チームがサステナビリティレポート作成に関連するすべての活動の計画とフォローアップに対する責任を負います。サステナビリティ戦略の伝達と情報の収集、およびこれら戦略と情報が全ての関係者と効果的に共有されるようにすることも、当該チームの担当事項です。専任チームは、社内の様々な部署を横断して作業を進めるとともに、外部の利害関係者と連絡を取ることが可能でなければなりません。 場合によっては、利害関係

者向けにサステナビリティレポートをカスタマイズし、彼らのニーズに合わせた情報を提供する必要があります。

3. 強力に始動――サステナビリティレポート作成の適切なフレームワークを選択

グローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI)、国際統合報告評議会(IIRC)、国連グローバル・コンパクト(UNGC)等、自社のレポート作成に利用できる多くのレポート作成フレームワークが存在します。

自社のレポートのモデルを選択する際は、これらのレポート作成フレームワークがそれぞれ異なる利害関係者を対象としていることに留意してください。たとえば、IICRが主として資金提供者と投資家を対象としているのに対し、UNGCはより幅広い対象に向けて情報を構成しています。さらに、GRI等の場合には、中核(Core)や包括(Comprehensive)など、複数のレポートオプションから選択できます。

4. 利害関係者を関与させ、見通しを改善

目標の設定とその評価のいずれを行うにしても、自社にとって重要なトピックがどれであるかを明確に把握しなければなりません。そのためには、利害関係者を明確に特定し、最も関連性の高い利害関係者を選択し、当該利害関係者に積極的に関与してもらう必要があります。

関与してもらう利害関係者を特定する場合、関連性に重点を置き、常に現実的であるよう心掛けてください。どんな企業も対象範囲内の個々の利害関係者全てと連絡を取ったり、対応したりする余裕はありませんから、自社と密接な関わりを持つ当事者に焦点を絞ります。

次に、より良いレポート作成のために利害関係者と連携します。ESGの問題、利害関係者のニーズ、自社が与える影響を改善する機会のある分野に関し、定期的に話し合うことにより、専任チームはこれらの重要なトピックを包括的に把握できます。戦略が策定されたのちも、こうした協力関係により、自社が利害関係者のニーズにどのように対応すべきか多くの見識が得られることから、サステナビリティレポートを適切な方向に導くことができます。

5. 方向性の把握――サステナビリティレポートの目的と目標を設定

ビジネスのあらゆる分野に共通なことですが、サステナビリティの目標は現実的かつ達成可能なものでなければなりません。従って、会社は進捗状況を正確に測定するためばかりではなく、レポートを受け取る人たちに進捗状況を明確に伝達するために、定性的および定量的な情報提供をする必要があります。目標達成に向けた取り組みを始める前の状況(ベースライン)についてより多くの情報を盛り込むほど、読者のレポートに対する理解は深まり、さらには結果の信頼性が高まります。また、一度にあまり多くの目標を設定して会社に過度な負担をかけないよう注意してください。チームが実際に進歩を遂げるための勢いをそがないよう、目標の数を絞り込みます。

6. 第三者評価によりサステナビリティレポートをレベルアップ

第三者評価機関など社外パートナーとの連携により、取組みを明確化し、最終結果を向上させることができます。第三者評価によって、開示した情報が検証され、それらの情報に不正確なものが含まれている潜在的なリスクを軽減すれば、サステナビリティレポートの信頼性が高まります。第三者評価のもう1つの利点は、「外部の目の効果」であり、会社の進捗状況に対する新たな視点を提供し、改善可能な他の分野を明らかにしてくれます。

確立された国際的な評価基準に従ってこのようなサービスを提供できる認定コンサルタント会社は数多くあります。こうした第三者保証の基準として最も広く使用されているのは、AA1000保証基準(AA1000AS)と国際保証業務基準3000(ISAE3000)です。

サステナビリティレポートの成功は努力の表明

真の進歩を示すレポートは、企業の努力を表しています。サステナビリティレポートの作成は、効果的に行えば、会社と利害関係者の双方に利益をもたらし、全ての関係者にとって有用かつ有意義なものとなります。サステナビリティレポートの情報により会社の市場における優位性が高まり、競合他社に差を付けることができます。利害関係者側においては、明確に測定された会社の取組みが示されることで、情報に基づく選択を行うことができます。つまり、消費者による製品の選択や、投資家による企業評価に影響を与える可能性があります。上記の手順に従い、自社ですでに実施していること、または実施を予定していることをより綿密に調べ、将来的に大きな成功を収められるレポートを作成することが可能です。