廃水処理におけるコンプライアンス――事前に知っておくべき基本事項

全ての施設で法令に適合した廃水処理を行っていますか

許可取得から汚染物質管理まで、プログラム最適化のための基本的な道筋とは

Taylor Murphy

by Taylor Murphy

*本記事は、2021年8月発行英語レポートの抄訳

 

連邦政府機関から金融投資家まで、法令を遵守した(かつ良心的な)産業廃水の排出は誰もが注目するところです。 廃水の排出方法は、健康と環境に直結していることから、労働者ひいては環境保護の観点から重要な役割を果たします。水資源の管理に着手するにせよ、新しい施設を軌道に乗せるにせよ、そのプロセスと許可取得において必要事項を満たしているかどうかチェックしてください。

廃水管理がなぜ重要か

水のライフサイクル管理の最後のステップである廃水処理は、企業が施設から水を排出するすべての方法を指します。 廃水は、事業の工程に限らず、食堂、休憩室、トイレなど、企業の様々な場所から排出されます。

ずさんな廃水処理と聞いて、大多数の人々が最初に思い浮かべるのは環境への壊滅的な影響です。それはビジネスにとっても悪いニュースを意味します。法令違反に対する高額な罰金に加えて、不注意な排出は結果的にESG評価でスコアを下げることにつながります。事実、廃水処理に関する要素は、一般に認識されたESG(環境・社会・ガバナンス)のフレームワークにおいて、EHS基準の一部を構成しています。持続可能なビジネスの指標としてESG戦略に目を向ける投資家が増加していることから、自社の廃水処理の状況を注視する必要性がますます高まっているのです。

Downtown Toronto, Ontario

廃水処理の許可基準を満たしているか確認

多くの場合、廃水は地域レベル(州や県など)で厳しく規制されています。ただし、場合によっては上位の政府(連邦政府または国の政府)が廃水処理の規制においてより大きな役割を担っています。もちろん、米国やEU加盟国のような国々は、さらにそれを上回る、より厳しい水質基準を設定する可能性があり、実際、設定されることがあります。 これらの基準と要件は、許可の付与の際に課せられます。

企業が施設から廃水を排出する場合は許可を必要とし、多くの場合、施設ごとに許可が必要です。 また、廃水中の汚染物質、廃水処理の場所、排出量など、排出に関する特定項目について測定し、記録する必要があります。

廃水中の汚染物質を注視する

廃水に含有される汚染物質は、世界中で注意深く監視されています。 EU指令2008/105/ECでは、企業は許可取得のために、45の優先取組物質の排出に関する要件を満たす必要があります。これらの物質には、水銀、鉛およびそれらの成分を含む汚染物質に加え、シペルメトリン、シブトリンおよびキノキシフェンが含まれます。EUは近年、法律の「適合性チェック」の一環として、他の関連指令と併せ、地表水と地下水の汚染物質既存リストの見直しを行う提案を発表しました。

報告要件とその設定主体を知る

許可取得のために廃水処理のモニタリングと報告が要件として定められている場合もあります。

米国の水質浄化法は、連邦レベルにおいて廃水の排出を規制しています。具体的には、ある施設が点汚染源から米国の水域に排出を行う場合、その施設は国家汚染物質排出除去システム(NPDES)に基づく許可を取得することが求められます。点汚染源とは、排水管や人工水路など、特定しやすく、限定的であり、かつ分離された排水施設を指します。NPDESに基づく許可取得のためには、排出制限、モニタリングおよび報告要件が定められており、有害な汚染物質から環境を保護するための措置が施設に求められる場合もあります。

多くの州(アラスカ、カリフォルニア、フロリダ、メイン、ミズーリ、バージニアなど)では、連邦政府よりもさらに厳しい許可要件を課す州固有のNPDESプログラムが承認されています。そのため、米国所在の施設では、司法管轄区域ごとに、連邦または州いずれかの許可を取得し、これに従って廃水の排出とモニタリングを行う必要があります。

コンプライアンスに基づく廃水処理で世界を守る

人の健康と環境を保護するためには、コンプライアンスに基づく廃水処理が不可欠です。現実の世界でそれを正しく行うには、まず書類から始めねばなりません。より具体的にいえば、適切な許可を取得しなければなりません。一般的に、どんな性質の廃水であれ、それを排出する施設は例外なく、国や地方、州当局などから許可を取得する必要があります。汚染物質を含む廃水の場合はなおさらのことです。ビジネスが許可に際して、ありがちな落とし穴の犠牲となるのを避けるためにも、規則の細部まで必ず目を通してください。施設に対する個別の許可が必要かどうか、また、許可にどんな汚染物質や報告に関する要件が含まれているかをチェックしなければなりません。廃水処理プロセスを法的要件に適合させ、ビジネスを通じて世界全体の環境保護という利益に直接貢献することができます