10種類の有害物質と取扱いのポイント

地域によって危険とされる物質は異なるものの以下の物質は例外なく有害物質リストに含まれます

Diletta Manago

by Diletta Managò

*本記事は、2021年10月発行英語レポートの抄訳

 

有害物質の定義(および規制)は国によって異なります。しかし、以下に挙げる10種類の有害物質は、どの地域で事業を行う上でも管理上。注意を要します。国・地域の規制に関係なく、全ての企業には、労働者と地域社会の安全を保つという責任があります。新たな施設を立ち上げたり、事業に新規の原材料を導入したりする場合には、これら最も一般的な有害物質に留意し、ビジネスを行うに際して慎重に取り扱う必要があります。

注意すべき10種類の有害物質およびその取扱方法

従業員を保護するための手順書を作成するときは、使用頻度の高いこれらの有害物質とその危険な影響についての説明を記載しなければなりません。

1. アルゴン

アルゴンは無臭で不燃性の気体で、溶接、電化製品の製造、金属の精製に最もよく使用されます。高圧ボンベから噴き出したものが皮膚に触れた場合には、組織に重大な損傷を引き起す可能性があり、高濃度では(空気中の酸素濃度を低下させることにより)窒息の原因となることがあります。予期せぬ噴出が起こらないよう、アルゴンは垂直に置いたシリンダーにより輸送するとともに、適切な換気を行える場所で保管し、使用する必要があります。

2. カドミウム

展延性に富む軟金属であり、主に電池、合金、コーティング、太陽電池、プラスチック安定剤、および顔料の製造に使用されています。カドミウムとその化合物へのばく露は発がん性との関連が認められます。さらにカドミウムは、(一例として)循環器、神経、生殖器、呼吸器などに害を及ぼす可能性があります。この金属による悪影響を防ぐ最も効果的な方法は、製造工程や作業から排除する、あるいは他の物質に置き換えることです。排除や置換えが妥当な選択肢ではない場合、その発生源の隔離、ばく露の最小化、個人用保護具の使用等、様々な形態の管理を行う必要があります。

3. 二酸化炭素(CO2)

自然発生する気体の CO2は、ここに挙げる中で最もよく知られている有害物質の1つです。 CO2は、洗浄剤、冷却剤、噴射剤、潤滑剤等、多くの産業用途で大量に使用されています。空気中のCO2が高濃度になると、頭痛、めまい、錯乱、意識の喪失、さらには窒息を引き起こすことがあり、閉鎖された空間ではこのリスクが増大します。労働災害を防止するために、施設におけるCO2の使用と保管は、屋外または換気の良い場所でのみ行うようにしてください。

4. 塩素

自然発生するこの危険な化学元素は、液体と気体の両方の状態で存在します。プールで使用される塩素はおなじみですが、他にも農薬やプラスチックから医薬品の大部分にいたるまで、塩素は多くの日用工業製品の製造に使用されています。塩素は不燃性ですが、反応性と揮発性が高く、特に熱を加えた場合にそれが顕著です。塩素ガスは、呼吸器系、目、皮膚、粘膜に対する強い腐食性と刺激性を有し、高濃度の場合は強い有毒性を示します。塩素を安全に保管し、輸送するためには、まず塩素を加圧冷却して液体の状態としてください。

5. エチレンオキシド

有毒ガスであるエチレンオキシドは、布地、洗剤、医薬品、接着剤や、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂の原料など、多くの一般的な工業製品の製造に使用されています。塩素とは違い、この有害物質は可燃性です。エチレンオキシドに繰り返しばく露した場合、発がん性が認められる他、遺伝子、神経、生殖器官に悪影響をもたらします。従業員がエチレンオキシドのばく露を受ける場合、絶対にばく露限界値を超えないようにしなければなりません。適用される安全衛生規則を必ず遵守してください。

6. ガソリン

意外ではないかもしれませんが、ガソリンは世界中どこにでもある有害物質の一つです。この引火性の高い液体は、周知のとおり自動車の燃料や溶剤に使用されています。通常のガソリンには、ベンゼン、トルエン、キシレンなど、いくつかの異なる化学物質が含まれています。ガソリンは空気中での高い爆発性を有する以外に、吸入したり皮膚に触れたりすると深刻な健康被害を引き起こす可能性があります。ガソリンは常に許可された容器に保管し、絶対に発火源の近くで取り扱わないでください。

7. 鉛

鉛は広範に使用されているため、鉛に対するばく露は、最も古くから知られている職業上の危険の1つです。この有毒な重金属は、電池、ガラス、弾薬の製造等、いくつかの産業で使用されています。鉛を吸入したり飲み込んだりすると、がんや、腎臓や脳の重篤な損傷など、多くの健康上の問題を引き起こす可能性があります。労働者の安全を確保するために、まずは事業を行っている国・地域で適用される職場のばく露制限値を遵守しなければなりません。次に、従業員に対して個人用保護具を配布し、その使用法を指導することにより、さらなる安全保護を図ります。

8. 液化石油ガス(LPG)

LPGは、プロパンやブタンなどの炭化水素ガスの可燃性混合物であり、一般に、電化製品や車両の燃料および冷却剤として使用されます。この気体混合物は非常に引火性が高く、放出されて皮膚に接触すると低温やけどを引き起こす可能性があり、またアルゴン同様、高濃度では窒息の原因となることがあります。これらの理由から、施設においては適切な加圧容器に保管することが重要であり、容器を発火源から遠ざけておかなければなりません。

9. プロピレン

プロピレンは非常に可燃性の高い気体であり、主として石油化学、包装、およびプラスチック産業で使用されています。この気体も、空気中での濃度が高まると爆発や窒息を引き起こす有害物質の代表例です。の偶発的放出を防ぐためには、適切なシリンダーまたは容器に入れ、垂直に置いて保管し、発火源、火花、熱または炎から遠ざけてください。

10. 硫酸

この液体は化学業界で最も有名な化合物の1つであり、塗料、染料、肥料、電池の製造や、金属加工、鉛蓄電池内の電解液などによく使用されます。硫酸は非常に腐食性が高いため、取扱いには手袋、ゴーグル、ブーツ、防毒マスク等の適切な保護具の着用が必要です。

より多種類の有害物質を含めた独自リストの作成を

世界中の企業は、日々、有害物質を安全に使用し、取扱い、保管を確実に行う必要があります。まず初めに、各施設においてリスクの適切な特定を行わなければなりません。ここに挙げた事項について確認するだけで終わりではないことに留意してください。上記の有害物質から始め、さらに掘り下げた調査を行って、施設内の他の潜在的な危険物を特定します。重要なポイントの一つは分類です。操業する国・地域における正確な有害物質分類の種類とカテゴリーを理解しなければなりません。「何が」危険かを把握すれば、自社のビジネス全体にわたって、有害物質を「どのように」取り扱えば適切であるかも把握できるようになります。