グローバルに進展する製品規制:強化される拡大生産者責任

よりサステナブルな企業運営と人と環境に配慮した製品に対する規制は過去10年間、世界各地で進展してきました。2024年~2025年もこの傾向に拍車がかかると予想されます。本稿では、世界各地で拡大し、厳格化されている製品規制の動向を説明します。

by Hiromi Tasaki

欧州エコデザイン規則

まず欧州については、2024年6月28日、EUで持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR)が発表されました。

この規則は、EU市場に投入される製品をより持続可能にし、その環境負荷を減らすことを目的としています。ESPRは、市場に投入または使用される製品が満たさなければならないエコデザイン要件を設定するための新しい枠組みを確立します。

これらの要件は、製品の耐久性、再利用性、修理可能性、メンテナンスおよび改修の可能性、有害物質の存在、エネルギー使用と効率、水使用と効率、炭素および環境フットプリントを含む環境影響、予想される廃棄物の生成など、多くの側面に関わります。

さらに顕著な点として、ESPRはデジタル製品パスポート(DPP)を導入し、規制対象のすべての製品について、企業が市場に投入する際に当局、サプライチェーン、消費者に関連する製品情報を提供することを義務付けます。ESPRは、食品、飼料、生きた植物、動物および微生物、医薬品などの一部の例外を除き、市場に投入または使用されるすべての商品を対象としているため、影響は広範囲に及びます。そしてESPRは欧州“規則”のため、発効すれば直ちにEU域内で効力を発揮します。ただし、ESPRの実施に当たっては、欧州委員会の委任法によって詳細が補完される必要があります。これらの発表は2025年7月19日以降になることが予想されています。

製品の修理可能性

ESPRの要件の一つである修理可能性を具体的な法令に落とし込む国も出てきました。個人や企業が自分の製品を修理することを可能にすることは、実用性の問題だけでなく、より持続可能な未来への重要な一歩です。

このことを念頭に置き、フランスでは2024年7月1日から電気電子機器(EEE)の販売業者は、修理基金を通じて提供される割引について消費者に通知することが義務付けられました。これにより、クオリリペア(QualiRépar)ラベルを取得した修理業者でEEEを修理する顧客には割引が適用されます。一方、ベルギー市場に商品を投入する企業は、2025年5月2日から修理可能性と耐久性について消費者に通知し、環境への影響を減らすことを目指さなければなりません。対象となる商品はベルギー王令によって決定される予定ですが、市場に投入される指定製品については、指定された基準に基づいて計算された修理可能性および耐久性指数を明示する必要があります。

ベトナム危険製品に対する規制

ベトナムでも危険製品に関する規制が厳格化されます。適切な指示や警告表示がない場合に安全上の危険をもたらす可能性のある製品の製造業者、輸入業者、および販売業者は、2024年7月1日から公表および報告に関するより厳しい義務を負うことになります。ベトナム市場に製品を投入する企業は、2024年7月1日から施行される政府の法令第55/2024/ND-CP(「法令」)に基づき、消費者に販売および提供される製品およびサービスの安全性と品質を確保するために、より厳しい欠陥製品義務を負うことになります。法令に基づき、企業は欠陥が見つかったグループA製品およびグループB製品に対して異なる公表手続きを遵守する必要があります。グループAの欠陥製品には、消費者の生命や健康に損害を与える可能性のある製品が含まれます。グループBの欠陥製品には、消費者の財産に損害を与える可能性のある製品が含まれます。消費者の生命および健康に損害を与える可能性のある製品(グループA製品)については、当局からの要求を受け取ってから3日以内に欠陥製品およびそのリコールを公表しなければなりません。このような欠陥製品の分類は、2011年の以前の規制では確立されていませんでした。

さらに、企業は、工業貿易省に加えて、州当局を含む他の国家機関に欠陥製品のリコールに関する報告を提出しなければなりません。

米国プラスチック製品規制

最後は米国におけるプラスチック汚染に対する規制についてです。

2023年10月にプラスチック汚染からの解放法案が米国議会で再提案されました。法案は、プラスチックの生産量を減らし、リサイクルを増やし、プラスチックによる汚染浄化の負担をプラスチック生産者に転嫁することを目的としています。採択されれば、特定のプラスチック製品を製造、使用、または加工する企業は、2025年2月から拡大生産者責任の目標と浄化要件を遵守する必要があります。これにはプラスチックゴミによる汚染の浄化と廃棄物・リサイクルプログラムの作成が含まれます。

さらに、製造者は、環境と健康への影響を最小限に抑えるよう配慮して、包装や使い捨てプラスチック製品などの対象製品を設計する必要があります。

なお、プラスチック製品に関する規制は、米国では州レベルでも拡大しています。例えば、ワシントン州で特定のプラスチック製品を市場に投入する企業は、ワシントン州環境省が管理するワシントン州のポストコンシューマーリサイクルコンテンツプログラムに従わなければなりません。2023年12月1日から、ワシントン州で飲料、家庭用洗浄製品、個人用ケア製品をプラスチック容器やプラスチックゴミ袋に入れて市場に投入する企業は、ワシントン州環境省(WDE)の登録および報告システムを使用しなければなりません。

日本企業への影響

今や製品規制は、製品含有物質の制限やリサイクル義務に限定されません。製品の耐久性、再利用性、修理可能性、エネルギー・水使用と効率、カーボンフットプリントなど多岐にわたり、消費者に対する表示を含めたコミュニケーションも細かく規定されるようになってきています。

そしてこのような動向は各地で進展しているため、グローバルに製品を展開する企業にあっては、各市場における要件を理解して準備し、対応する必要があります。各市場における製品規制の動向を継続的に確認し、適時計画を立案または見直し、アクションに落とし込める体制作りが重要だと言えます。