EU REACH制限ロードマップの最新動向

欧州委員会は、2024年7月1日にてこのEU REACH制限ロードマップを更新し、EU化学物質戦略に基づく有害化学物質の禁止のタイムラインを概説しました。

by Sok-Han Ng

欧州委員会は2020年10月にて公表された持続可能な化学物質戦略(Chemicals strategy for sustainability:CSS)に基づき、 2022年4月にREACH規則で制限が検討されている、または今後検討が想定される物質を整理した「制限ロードマップ」を公表しました。

欧州委員会は、2024年7月1日にてこのEU REACH 制限ロードマップを更新し、EU 化学物質戦略に基づく有害化学物質の禁止のタイムラインを概説しました。 主な対象化学物質と関連するタイムラインは次の通りとなります。

  • 2024年第3四半期にてポリ塩化ビニル(PVC)およびその添加物についての制限提案意向の提出が予測されております 。
    • 2024年11月29日以降、ポリ塩化ビニル(PVC)製品において、重量比で1%以上の鉛を含むことが禁止されます。ただし、回収されたPVCを利用した製品など、一部の特定用途については、より長い移行期間が設けられています。
  • 2024年10月にすでに制限提案意向が示された育児用品中の発がん性(Carcinogenic)・変異原性(Mutagenic)・殖毒性 (Reproductive toxic),即ちCMR物質についての制限提案に向けた検討が進められる予定です。
  • クロム酸鉛についてはさらなる規制が検討されており、2024年後半までに提案される予定ですが、今だ進捗がありません。
  • オルトフタル酸エステル(C4-6)は2025年第4四半期までにREACH認可リストに追加することが検討されています。
  • ECHAは2024年12月18日に特定の芳香族臭素系難燃剤(aromatic brominated flame retardants (ABFRs)に関する調査し、その結果を発表しました。その結果によりますと、非ポリマーABFR添加剤の使用は、その持続性、生体蓄積性、毒性により環境を汚染することが判明しました。現時点では企業に直接影響がありませんが、この調査結果に基づいて、欧州委員会が2025年第1四半期までにECHAに制限案の作成を要請するかどうか、また要請する場合はその範囲を決定する際に役立ちます。
  • 3種の有機りん系難燃剤(TCEP、TCPP、TDCP)及びその他の難燃剤は米国で進行中の研究による危険性の解明待ち状態で、タイムラインは未定のままであり、さらなる遅延が予想されます。
  • オクトクリレンの付属書 XV 制限書類の提出は 2024年10月から2025年1月10日に延期されます。
  • ヒドロカルビルシロキサン類の正式な制限プロセスを実施されるのは2025年以降と予測されます。
  • 対象物質範囲が拡大された六価クロム化合物は、制限提案の提出は当初予定されていた 2024年10月4日から2025年4月11日まで延長されました。
    • 10月末に、欧州委員会は航空宇宙および防衛業界における以下の5種類の六価クロム化合物の使用を認可する方針を発表しました。欧州委員会は、今後2か月以内に正式な公布を行う必要があります。対象となる六価クロム化合物は次の通りです:
      • 16: 三酸化クロム (1333-82-0)
      • 18: 二クロム酸ナトリウム (10588-01-9, 7789-12-0)
      • 19: 二クロム酸カリウム (7778-50-9)
      • 22: クロム酸ナトリウム (7775-11-3)
      • 28: 三クロム酸ジクロム (24613-89-6)

これら5種類の六価クロム化合物が正式に認可された後、企業は認可された用途および条件に基づき、さらに12年間の使用が可能となります。使用可能期間は認可申請の提出日を基準に計算されるため、現時点から換算すると、今後約10年間の使用が見込まれます。認可された用途は以下の通りとなります。

  • ビスフェノールS(BPS)の評価が進行中で、2025年半ばまでに規制提案が予定されております。また、2024年12月19日に欧州委員会は健康に有害な影響を及ぼす可能性があるため、食品接触材料にビスフェノール A(BPA)の使用を禁止する法案を採択しました。金属缶のコーティング、再利用可能なプラスチック飲料ボトル、給水クーラー、その他の台所用品など、食品や飲料と接触する製品に BPA が使用できないこととなります。 欧州では、乳児用哺乳瓶や類似製品へのBPAの使用がすでに禁止されています。ほとんどの製品には18か月の段階的廃止期間が設けられ、代替品がない場合は例外がごく限定されます。これは、業界が適応し、食品チェーンの混乱を回避する時間を与えるためです。禁止対象には、生殖系や内分泌系に有害なその他のビスフェノールも含まれます。詳しくは弊社のニュース&インサイトの記事で確認することができます。
  • 1,4-ジオキサン: 書類提出は2025年10月に予定されております。

ビスフェノール、クロム酸鉛、感熱紙に含まれる物質等のそのたの物質については、ロードマップ草案に従って、以前に推定された制限タイムラインが維持されます。

更新された制限ロードマップは今までと同じように法的拘束力を有する文書ではなく、企業に直接的な影響はありませんが、プール1や附属書IIはECHAの制限意向登録簿に収載される前段階の情報であり、企業が制限の可能性がある物質等に関する情報を早期に把握する上では有用な資料と言えます。

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