コンプライアンス指標を進化させる:EHS専門家からの提言

洞察を深めれば、より良い結果が生まれます。 EHSコンプライアンスの専門家、ブルース・アドラーが、コンプライアンス指標をより有効に活用する方法について語りました。

IMG_1483

by Bruce Adler

コンプライアンス指標はすべての企業にとって成功の鍵となります。しかし、多くのEHS専門家は、コンプライアンス指標をうまく活用する方法について頭を悩ませています。毎日無数の出力を処理しているにもかかわらず、これらすべてのデータがコンプライアンス状況を完全に示しているとは限りません。ゼネラル・エレクトリック社で28年間にわたってEHS上級顧問を務めたブルース・アドラー氏とのインタビューから、コンプライアンス違反の背後にあるニーズに対応するために、どのようにデータを活用することができるか、についての洞察をお届けします。

EHS専門家にとって、リスク領域の特定以外に、コンプライアンス指標が重要なのはなぜですか?

最初に要点を言うと、EHS専門家は、企業の経営層・意思決定者と同じ言語を話すことが不可欠です。これらの意思決定者は毎日、あらゆる指標を使用して、目標が何であれ、どのように改善し、より速く、より安価に行う方法を決定します。在庫回転率、キャッシュフロー、顧客対応時間、またはその他の財務データなど、指標は日常的に使用され、基本的な業務にDNAのように組み込まれています。

EHSチームがそのような環境で成功するには、同じように考え、同じ言語で話すことが不可欠です。コンプライアンス指標は、そのプロセスの重要な要素です。EHS担当者は、コンプライアンス指標が組織のパフォーマンスを示し、経営者が影響を与える分野に費用を費やすことを確認する必要があります。 EHS指標は、多くの場合、排出基準超過や死傷者数などの「通常の出力」です。これらは、必ずしも正しい指標ではなく、少なくとも唯一の指標ではありませんが、EHS部門がどのように機能しているかを示す方法と言えます。より正確に言うと、指標に基づきストーリーを構築し、そのストーリーを活用して、自分の役割、希望予算、EHSコンプライアンスプログラムのロードマップを主張することができるのです。

測定すべき「正しい」EHSコンプライアンス指標は何ですか?

話をわかりやすくするため、指標を2つのグループに分けて考えましましょう。最初のグループには、標準のコンプライアンス指標、または前述の「通常の出力」があります。これらの指標には弱点はあるものの、誰もが、特に本社機能が知っておくべき情報が含まれています。具体的には、違反件数、罰則・罰金適用数、死傷者数、漏洩、排出超過などの出来事の結果が含まれます。中には、従業員が負傷したり、地域社会に影響を与えたり、あるいは新聞に掲載されるような事故も含まれます。これらのコンプライアンス指標は、EHS担当者が行っていることの現時点での状況を表します。出来事の結果は、理解しやすく説明しやすいものなので、何か問題が生じた場合に最初に問われます。ただし、これらは出力指標であるため、問題発生後に算出されます。

そこで2番目のグループに入る「無形の指標」が必要になります。このグループは、負傷や排出基準超過などの「失敗」に先行し、可能であれば予防することができる行動のコンプライアンス指標を対象としています。つまり、コンプライアンス違反をより効果的に低減するための予防努力を測定する方法です。出来事の結果指標を低減するには、どのような対策を講じることができるかを自問してください。それには、教育・訓練などの先行的なもの、または事故調査などの事後的なものがあります。

なぜ超過数など「通常の」コンプライアンス指標では不十分なのでしょうか。

私の経験では、違反件数などの出力コンプライアンス指標は不完全である可能性があり、必ずしも役立つとは限りません。その理由は、次のとおりです。まず、過去を示すのみの指標である点です。それらは、あなたが過去に失敗した事実を伝えるだけであり、将来の出来事を防ぐ方法ではありません。また、それらはランダムに起こりえます。出力コンプライアンス指標は、しばしば予測不可能な主観的要因に左右されます。査察を受けましたか?査察は現場にとって都合の悪い日に行われましたか?その日の査察官は特に厳格でしたか?監査の標準化が行われていないと、EHSプログラムの現状を完全に把握することはできません。最後に、出力指標は「悪いこと」が測定されることを、誰もが知っています。このため、過少に報告するリスクが高まります。

もちろん、出力指標を廃止することはできませんが、入力指標を設定することで、いくつかの弱点を相殺し、全体的な結果を改善することができます。そのためには、コンプライアンス違反の問題を軽減するために何が実施されているかを測定する方法を見つける必要があります。 GEでは、拠点や事業部門にコンプライアンス状況の自己評価を定期的に実施する強制的な監査プログラムがありました。その際、コンプライアンス違反の監査結果(通常の出力指標)を測定するのではなく、監査結果を是正し、業務を遵法状態に戻すまでの時間を測定しました。これを「指摘事項是正率」と呼びました。

入力指標によって、コンプライアンス文化はどのように改善されますか?

データや結果だけでなく、単に入力コンプライアンス指標を使用するだけでも、EHSプログラムの進歩に役立ちます。先ほど述べたように、入力指標は、より良い成果をもたらすのに役立つのです。それは、組織内のコンプライアンスに対する認識を高め、アプローチを強化することによってもたらされます。

従業員が「私が負傷したら、裁かれ、罰せられる。」と認識している場合、この従業員はコンプライアンス違反の問題を共有することに後ろ向きになります。指摘事項是正率や管理職の現場訪問数などの入力指標は、会社が正しい行いをすることに真剣に取り組んでいると従業員に示します。 「あなた方の上司を事故調査で評価します」と従業員に言うと、会社は正しい行動に対する説明責任をチームに与えていると受け取られるでしょう。これにより、従業員は、非難の矛先を探すのではなく、うまくいかなかった理由を突き止め、二度と起こらないように是正することにコミットする重要性を理解します。それはコンプライアンス文化を醸成する上で重要なステップです。

コンプライアンス指標を活用して、企業を進化させる

コンプライアンス指標は、ビジネスを改善するための鍵となります。それは、正しい行動を促す方法でそれらを使用している場合に当てはまります。報告の枠組みが会社が義務付けたもの、あるいはEHSチームによって自主的に決定されたものであっても、入力指標を追加して、限定的になっている可能性のあるコンプライアンスの全体像を拡大することを検討してください。最も影響力のある指標、つまり社内の認識を変化させ、チームに権限を与えプログラムをより積極的に行うことにつながる指標に重点を置いてください。

Bruce Adlerは、コンプライアンス問題とプログラムに特化したEHSコンサルティングサービス、Adler Villani、LLCのプリンシパル。 EHS分野で40年間活動し、環境NGO、米国環境保護庁(EPA)、2大企業に勤務経験を持つ。