台湾におけるNP及びNPEOの使用制限について、最新動向及び他の地域比較

台湾におけるNP及びNPEOは、工業用界面活性剤として広く使用されてきた化学物質です。これらは洗剤、精練剤、染料分散剤、印刷用のり、紡績潤滑油、潤滑剤など、多くの製品に含まれています。使用制限について、最新動向及び他の地域比較を記事に、是非お役立てください。

by Sok-Han, Ng,

ノニルフェノール(NP)とノニルフェノールエトキシレート(NPE)は、工業用界面活性剤として広く使用されてきた化学物質です。これらは洗剤、精練剤、染料分散剤、印刷用のり、紡績潤滑油、潤滑剤など、多くの製品に含まれています。

しかし、NPとNPEは環境中で分解されにくく、生態系や人間の健康に悪影響を及ぼすことが懸念されています。特に、水生生物に対して高い毒性を持ち、内分泌かく乱作用(環境ホルモン作用)を示すことが報告されています。

これらの理由から、各国でNPとNPEの使用や含有製品の販売が規制されています。例えば、欧州連合(EU)では、2021年2月3日以降、通常の使用で水洗いが予想される繊維製品に0.01重量%以上のNPEを含有するものの上市が禁止されています。

日本においても、NPとNPEの環境リスク評価が行われており、これらの化学物質の使用削減や代替品の検討が進められています。例えば、紙・パルプ業界や繊維業界では、NPEの代替品の開発や排水処理の改善に取り組んでいます。 これらの規制や取り組みは、NPとNPEの環境中への排出を削減し、生態系や人間の健康への影響を最小限に抑えることを目的としています。

また、台湾環境部(MOE)も2024年10月21日に「毒性化学物質及び当該運用管理事項」に関する改正案を発表しました。本改正案は、毒性化学物質管理法(TCCSCA)に基づき、毒性データの更新やクラスIV毒性化学物質の定義の調整を反映しています。これにより、人間の健康や環境への潜在的な影響を軽減することを目的としています。同改正案では、以下の内容が提案されています。

 

新たに追加される毒性化学物質
  • PFOS塩および関連化合物: 5種類を追加。
  • PFOA塩および関連化合物: 352種類を追加。
  • ノニルフェノール(NP)関連物質: 12種類を追加。
  • ノニルフェノールポリエトキシアルコール(Nonylphenol polyethylene glycol ether)、ノニルフェノールポリエトキシル(NPEO)関連物質: 28種類を追加。

NPEOは、NPEの中でも特にエチレンオキシド(EO)の数が少ないオリゴマー(低重合体)を指します。NPEOはエチレンオキシドの数が少ないため、水への溶解性が低く、分解されやすく、環境中でNPに戻りやすい特性があります。NPEOはNPEの分解過程でも生成されるため、環境中にNPEOが存在すると、最終的にNPが蓄積しやすくなります。

本改正案により、毒性化学物質リストが拡充され、管理対象が大幅に広がります。

 

NPおよびNPEO物質に関する規制強化
  • NPおよびNPEO物質の許容濃度を、従来の5%から0.1%に引き下げます。
  • 同物質の内分泌かく乱特性を考慮し、管理基準を厳格化します。

本改正案は、米国やEUの規制と一致しており、国際基準に基づいています。NPおよびNPEO物質は、すでに2008年から家庭用洗剤の製造で使用が禁止されていますが、今回の改正案により、以下の用途でも使用が禁止される見込みです。

  • 工業用および構造用洗剤の製造
  • 繊維および皮革製品の処理
  • 金属加工
  • パルプおよび紙の製造
業界への影響と対応措置

改正案が公布された場合、業界には以下の対応が求められます。

  • 関連ライセンスの取得
  • 製品ラベルの修正
  • 警報検知装置の設置
  • 専門的な技術管理および対応要員の配置

業界がこれらの要件を満たすために、1年から18か月の猶予期間が設けられる予定です。同改正案の意見公募は、2024年11月末に終了しました。

さらに、台湾環境省は、2008年以降、家庭用洗剤の製造におけるNPおよびノNPEOの使用を禁止しました。環境と健康への危険を考慮して、多くの規制を設けています。国際規制の動向に合わせ、「毒性化学物質及び当該運用管理事項」の改正案を発表するとともに、全ての洗剤の製造におけるNP及びNPEOの使用を全面禁止することをことを提案しております。また、輸入されたNP系洗剤及びNPEO系洗剤は、使用後に環境中に拡散し、環境や人の健康に被害を及ぼす可能性があると考えられ、廃棄物処理法第21条の許可規定に基づき、輸入基準を定めました。NP及びNPEOを含有する洗剤の輸入制限を二段階に分けて実施される予定です。

 

輸入制限の段階的実施
  1. 第1段階: NPまたはNPEOを5重量%以上含有する洗剤を対象に、2026年9月1日から実施。
  2. 第2段階: NPまたはNPEOを1重量%以上含有する洗剤を対象に、2027年3月1日から実施。

台湾環境部は、EUの洗剤規制(EC No 648/2004)に基づき、洗剤を「洗濯や清掃に使用される石鹸や界面活性剤成分を含む製品」と定義しています。この定義には液体、粉末、ペーストなどの形態が含まれ、家庭用・公共機関用・産業用が適用範囲に含まれます。

特例申請と代替品の使用

ただし、輸入事業者が特定用途(例: 航空機エンジンや軍事兵器の洗浄)に適した代替洗剤を入手できない場合は、裏付け文書を添えて中央所轄当局に申請することが可能です。また、適切な代替品がない場合に限り、以下の条件を満たした場合のみNPおよびNPEOを使用できます。

  • 機器、プロセス、廃水および廃棄物の全体的な処理計画を提出する。
  • NPおよびNPEOを完全にリサイクル、焼却、または廃水から除去できることを証明する。

これにより、業界は規制強化に対応するため、さらなる環境保護措置を講じる必要があります。

詳しくはこちらのニュース&インサイトの記事にて確認することができます。

世界におけるNPおよびNPEOの規制状況

 

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